インタビューvol.4 TEAPOND 三田祐也さん
白河一丁目にある「TEAPOND(ティーポンド)」さん。清澄白河を訪れる観光客の方はもちろん、地元の方にも愛される紅茶の専門店です。今回は店主の三田 祐也さんに、この街でお店を立ち上げた経緯について詳しくお話を伺いました。(2016年11月)
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冬は販売、夏は仕入れ中心。知られざる紅茶屋のお仕事。
ー お店にはフクロウのモチーフがたくさんありますね。
そうなんです、フクロウはTEAPONDのシンボルなんです。
ー なぜフクロウなんですか?
アイコンになるいいものはないかなと考えていたとき、テレビでやっていた中国北部のお茶畑のドキュメンタリーを思い出したんです。
ー 中国のお茶畑…?
お茶畑を営む少数民族たちが畑の守り神としてフクロウを大切にしている姿を観たんです。ひょこひょことお茶の樹の下から出てきて鼠などの害獣をやっつけるフクロウの様子がかわいらしくて、ブランドのアイコンにぴったりだなと思って選びました。
ー なるほど。かわいいパッケージのデザインはデザイナーさんが作られているのですか?
実は、僕が作っています。
ー もともとデザインの勉強を?
いえいえ。イラスト素材や写真などを組み合わせてコラージュして。パソコンをさわるのが好きなので、自分のできる範囲でやっています。
ー すごいですね…! デザインのほか、お店の裏側ではどんな作業をされているんですか。
販売や梱包のスタッフがいるので、僕の仕事は仕入れやホームページの更新などが中心になります。
ー 1年をとおして忙しい時期はありますか?
繁忙期は気温の下がる11月から母の日ギフトの需要が高まる5月くらいです。
ー 暑い時期はどうでしょう。
やはり冬に比べると売れ行きは落ちます。ただその時期に何をしているかというと、お茶が摘まれる時期なので世界中の産地から買い付けをしています。
ー なるほど。冬は販売がメインで夏は仕入れがメイン。
そうですね、寒くなるまでに買い付けを完了させて、繁忙期にむけて準備を整えるかんじです。
ー 仕入れたお茶が店頭に並ぶまでに、どんな作業をされるんですか。
日本茶はコーヒーのロースト作業のように、最後に火入れなど、日本茶屋さんがする作業があるんですけど、紅茶はそういう工程はないので基本的に仕入れたものをそのまま商品化します。いくつかの銘柄をブレンドしたり商品の名前を決めたりするあたりが、ブランドのオリジナリティを出す鍵になってきます。
ー 商品を店頭に並べるまでで、特に大変なことは?
仕入れる前に世界中からたくさんサンプルが届くんですけど、それに対して早く返事をしなくちゃいけないところでしょうか。
というのも、50個くらい取り寄せた紅茶を飲み比べるのは、どんなに紅茶好きであってもなかなかつらい作業なんです。高品質な紅茶だと味の個性が強いので、たくさん飲むと胃にもこたえるし味覚も麻痺しがちで…(笑)
ー 体力的に負担が大きそうですね。
もうほんとうに。日本酒のように香りだけたしかめて口からだすテイスティングの方法もありますが、お客さんは実際ご家庭で飲むわけですから。僕はなるべく実際に飲んで喉ごしなんかも気にして選んでいます。
ー そこは妥協せず、お客様目線で選ばれる努力されているのですね。
はい。商品選びも同じで、僕の好きなものだけを仕入れるのではなく好みと全く違うタイプや似たタイプなど、パズルのピースをうめるようにバランスを見て構成していきます。
ー バランスを見ながらメニューを作っていくんですね。
そうですね。悩むときはみんなに意見を聞くんですけど最終的に決めなきゃいけないのは僕なので。TEAPONDのブランドづくりの一番大切な部分であり責任のある作業だと感じています。
ゆったりとした経営リズムにフィットする街、清澄白河
ー 紅茶の専門店は、とてもめずらしいイメージです。
大手さん以外だとまだまだ専門店は少ないですよね。ただ元来、日本人は紅茶好きなんです。自動販売機のペットボトルでも紅茶がないケースは少ないくらい。
ー たしかに…!
日本ではご自宅でわざわざポットで紅茶を飲まれる方は少ないのですが、世界的に見ると水の次に飲まれている飲料が紅茶なんです。それくらい日常にあたりまえにある飲み物なんですよ。
ー そんなに飲まれているなんて、知りませんでした。
ですよね。僕としては、紅茶の文化が日本でもっと日常の習慣として根付いてほしいという想いがあります。
ー 三田さんはどういう経緯で紅茶専門店をスタートされたのですか?
衝撃的なきっかけがあったわけではないんですが、たまたま20歳のとき旅先でフランスの紅茶屋さんに入ったんです。そのお店の雰囲気が印象に残っていて、それで帰国したあと日本でそのお店に就職したんです。
ー 社会人としてのキャリアのはじめから紅茶を選ばれていたのですね。
今のように紅茶屋さんになりたくて仕事を探していたわけではなく、たまたま情報誌を見ていたらそういうご縁があったんです。なのでわりとこう…スタートの時点で紅茶を生涯の仕事にしよう!というかんじではなかったですね。
ー ではどうして、ご自身のお店を持つことに…?
お茶の会社を2つ経て独立したのですが、その2つの会社は「小売中心」と「卸し中心」とビジネススタイルが対極的な会社だったんですね。2つの会社で俯瞰して業界の成り立ちを知っていくうちに「じゃあ自分がやるとしたらどうやる?」ということを考えるようになって。会社員として10年くらい働いたあと年齢的な節目もあったので、お店を立ち上げました。
ー なるほど。最初から実店舗を立ち上げられたんですか?
いえ。最初は通販と卸しのみでスタートしました。桜新町にある実家の一部を借りて、やっていましたね。なので店舗としては清澄白河が初めてです。少し経ったころに「実店舗はないんですか?」「手にとって見てみたいです」という声がでてきたので、場所を探していくうちに清澄白河がいいかも、となって…。
ー でもなぜ清澄白河を選んだのですか?
もちろん様々な場所を検討しました。事務所なのかショールームなのか、お店の役割を考えつつ自分たちの予算にあったところを探すと、自ずと中心街ははずれて。そんなとき清澄白河の物件が空いていると連絡をもらったんです、たしか2010年頃に。
ー まだブルーボトルさんもない頃ですよね。
そうなんです。なのでオープン当初は「お店を始めます」と伝えても「清澄白河ってどこ?」「スカイツリーのほう?」みたいな反応で。今はすっかり”コーヒーの街”として認識されているけれど、当時はなかなか伝わりづらかったのが悩みでした。(笑)
ー 最近はお店もたくさん増えましたよね。
はい、本当にお店もたくさん増えて、観光客の方もかなり増えて。プラスの変化ばかりでとてもありがたいなと感じています。海外からのお客様もいらっしゃるので、立ち寄ってくださるのも嬉しいです。
ー 清澄白河の好きなところは他にもありますか?
美術館やギャラリー、公園がたくさんあって、街全体のテンポがゆったりしているところですかね。近所で新しくお店をオープンされる方も同じくらいの年代や規模ですし、街としてのトーンが自分としてもここちよいかんじで流れているなと感じます。
ー 街のテンポですか。
たとえば自由が丘のようなところにだしてしまうと自分たちのペースと違う数字を追っていかなくてはならなくなるので、自分たちのリズムにあった場所という意味で、とても気に入ってます。訪れてきてくださる方の気持ちというか…求めていらっしゃるものもこの街のペースにあってますよね。
ー 三田さんのお気に入りのお店はありますか?
近所の「いちばん星」さんや「イルトラム」さんでしょうか。こうやって近所のお店に訪れたり、逆に近所のお店の方がいらっしゃったりするところも気に入っています。
ー 近所の方もいらっしゃいますか?
はい。開店まもないときは地元の方も「こんなところでお店開いて大丈夫?」「みんな紅茶なんか飲まないでしょう?」なんて心配して声をかけてくださったりもしたのですが、結果としてご近所の方もたくさん訪れてくださって本当にありがたいことです。
ー お店として、今後の展望や目標はありますか。
世界のお茶畑の実情を知ってもらう活動に力を入れたい想いがあります。
ー お茶畑の実情…?
インドやネパールなどのお茶の産地に行くと、現地では貧しい方たちが一生懸命仕事をされているんです。そういった国では、作られたお茶が適正な価格・ルートで卸されない実情があるんです。国の産業としても未成熟で支援がなかったり。
ー なるほど…。
販売する側の責任として、決して生産者を裏切ることをしない。適正な価格で販売して、こういった実情をお客さんに少しでも知ってもらえるような活動をしていくことで、生産地の抱える課題解決に貢献していきたいです。
ー 最後に、お店をやっていて、うれしい瞬間について教えてください。
自分たちで輸入して自分たちで作ったもの、それを眼の前で選んでいただけることが素直にうれしい瞬間です。日常の飲み物としてTEAPONDの紅茶が暮らしのなかにすっとなじんでいること、普段使いのお茶として選んでいただけることが幸せですね。
ー 今日はすてきなお話をありがとうございました!
special thanks to haruka shirakata
紅茶専門店 TEAPOND
白河1-1-11
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