インタビューvol.5 プロペラデザイン 手槌さん、山田さん、高橋さん、岡本さん
白河一丁目にあるデザインコンサルティング会社「プロペラデザイン」さん。道路に面した事務所の一部をショップ「ALL(オール)」として運営されています。今回はプロペラデザインの4名のスタッフさんにお店と商品の裏話を伺いました。(2016年12月)
左から、デザイナーの岡本さん・経理と販売を担当されている高橋さん・代表の手槌さん・デザイナーの山田さん。
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これからおもしろくなっていく気配が、この街にはあった。
手槌さん: 清澄白河ガイドさん、この街で知らないことなさそうですね。(笑)赤札堂のほうにあるお刺身が安い魚屋さん、知ってます?
ー 魚金さんですね。お刺身が舟皿3つで1,000円なんですよ。ポテトサラダもおいしいのでおすすめです。
岡本さん: すごい! さすがなんでも知っていますね。(笑)
ー いやいやそんなことありません。(笑)ところでプロペラデザインさんは、いつから清澄白河に?
手槌さん: 2003年に八丁堀で会社を立ち上げました。そのあと2008年に清澄公園前へ引っ越したんです。
ー この場所の前に、公園のほうにオフィスがあったのですね。
手槌さん: そうなんです。そのあと2015年に今の住所・白河一丁目に移転しました。
ー 八丁堀・清澄白河と東の街を拠点に選んだ理由はありますか。
手槌さん: 拠点として西の街は考えていなかったんです。あっちは既に人でにぎわっていたし。あまのじゃく的な考え方になるんですけど、まだ開拓されていない場所がいいなって考えていました。
ー なるほど。東のなかでも清澄白河へ引っ越しされた理由は?
手槌さん: 当時の清澄白河はギャラリーや美術館、ヨーガンレールさんのようなすてきなお店があって、アートの街としてこれからおもしろくなりそうな気配がありました。小さなお店がたくさんあって、みなさん自分たちでこだわりをもって運営されているのも気持ちよかったです。
ー そういった「空気」に魅了されて、清澄白河へやってきたんですね。
デザイナーではなく販売員としてプロダクトを説明できる場所。
ー ところでこのオフィス、事務所の看板ではなく「ALL」という看板が光っていますが?
山田さん: 道路に面した一角を使って、プロペラデザインがデザインしてきたプロダクトを展示販売しています。このショップを「ALL(オール)」という名前で運営していまして。
ー ALLにはどんな意味が?
山田さん: 「全体の」という意味です。デザインだけでなくクライアントであるメーカーとのやりとりを通して製造過程にも関わり、さらに販売まで「全て」自分たちが行うという意味で「ALL」と名付けました。使い方やメンテナンス方法も、デザインした私たちが全て理解しています。
ー デザインだけでなく販売も始めたのはなぜですか?
手槌さん: デザイナーが自分たちのデザインをプロモーションするためにPRに積極的になることへ抵抗があって、わたしたち今まで広報活動をあまりしてこなかったんです。ただ「デザインしたプロダクトについてきちんと説明したい」という想いはあったので、メディアへ売り込むのではなく一人の販売員としてきちんとプロダクトを説明できる場所を作ろうということになったんです。
ー なるほど。それで自分たち発信のアンテナショップを立ち上げたんですね。
手槌さん: そうです。ここならデザイナーとして「これわたしがデザインしました」みたいな伝え方をしなくて大丈夫。ALLを作ったことで、自分たちが手がけてきたモノを説明しやすくなりました。
岡本さん: お客さんに何を聞かれてもすべて答えられるので、気持ちがいいです。自分たちが育てた野菜を直接売っているみたいな感覚ですね。
ー デザインのPRではなくお客さんへ直接プロダクトを説明するための場所なんですね。ALLには、どんなお客さんがいらっしゃいますか。
高橋さん: 地元の方が多いですね。30〜50代の方が多いかな。
ー 接客するとき、高橋さんが気をつけていらっしゃることはありますか?
高橋さん: 「自分だったらどうされたい?」と考えて、都度100%の力で接客します。話しかけられたくなさそうだったらとにかく話しかけなかったり、世間話をしたいような方にはとことん向き合ったり。
岡本さん: 最長何時間でしたっけ…?
高橋さん: 3時間くらいお話ししたこともありますね。
みんなで生み育てたモノだから、誰かひとりの手柄みたいには語れない。
手槌さん: 前職のデザインコンサルティング会社で山田と知り合いました。そのあと退社して、プロペラデザインを立ち上げて山田に入ってもらって、岡本が入って、経理と接客の担当として高橋が入ってくれて。そんな流れで今に至ります。
ー ALLに並んでいるプロダクトは、プロペラデザインとしてデザインコンサルティングを担当した「クライアントワーク」が多いんですか。
岡本さん: そうですね。ブラシ、ゴミ箱、バッグ、キッチン用品…。
ー デザインの分担はどうされているんですか?
手槌さん: クライアントごとに担当が分かれていますけど、そんなにスパッとわかれているわけではないです。たとえば生活用品の試作品があがってきたら、みんなで実際に使ってみて意見を出し合って調整したり。
岡本さん: 「この色がかっこいい!」「このかたちがかわいい!」そういう感覚的なところでいきなり100%ができあがる世界じゃないので、ひとつずつ意見を出し合って、使う人やその人たちの生活を観察しながらデザインしていくんです。
ー プロダクトデザインは、地道なプロセスの積み重ねなんですね。
手槌さん: みんなで考えてプロダクトを生み育てていくというか…だからALLの店頭で、まるでだれかひとりがつくったみたいに話すのはなんかしっくりこないというか。
山田さん: みんなの意見と協力があって、さらにその前後にはメーカーさんや営業さんや販売を担っているお店の方がいて、だから自分たちデザイナーが全てをやったかのようにみえるのはどうなの?って思っちゃう。
ー 売れる瞬間と商品が完成した瞬間、どちらがうれしいですか?
手槌さん: モノになった瞬間はね…反省でしかないから。(笑)店頭に並んで反応が返ってくるまでは正直実感が湧かなくて、手にとって使ってもらって、たくさん売れて、それで初めて実感が湧くというか。
ー なるほど。どちらかというと売れたときのほうが心動くんですね。思い入れのあるアイテムはありますか?
手槌さん: うーんむずかしいですね。あえていうならこのハサミでしょうか。
ー ハサミ?
手槌さん: せっかくならたくさんの人に使ってもらいたい!という思いがあります。このハサミは2段階でカチカチっと分解できるんです。
ー 山田さんはいかがでしょう?
山田さん: わたしは1つだけあげるのはむずかしいですね。全て思い入れがあるので、すごく。自分の我が子たちに順位付けするようで、これは決められませんね。(笑)
ー では、プレゼントにおすすめなアイテムは?
山田さん: あえていうならバッグとかストールとか。
ー ストールですか。
高橋さん: わたしたちのオリジナルプロダクトもあって。それがこのラオス製のストール。
ー なぜラオスでストールを作ることに?
手槌さん: 自分たちから発信するプロジェクトを何かやりたいと漠然と考えていたところにご縁があったんです。たまたま知り合いづてにラオス大使館の方とつながって「ラオスで何ができるかな?」というところからスタートして、やっと綿の織物とカゴの編物へたどりつきました。年に1〜2度現地に赴き、生産者と話し合いクオリティを高める取り組みを続けています。今はラオスに労働を作ることと、その関係性を長く続けていくことを目標に、生産・販売しています。
ー すてきな取り組みですね。
モノだけでなくコトが動き流れる場所へ進化していきたい。
ー では最後に、プロペラデザインとしてこれから挑戦したいことはありますか?
高橋さん: ここはブルーボトルコーヒーにも近いので道をよく聞かれるんですけど、それでもいいなって思っています。つまり「なんでも屋」でいい。とにかく気軽な存在でありたいんです。小学生とか気軽にペンとか買いにきてくれるようなお店になれたらうれしいな。
手槌さん:お客さんからの商品についての感想はメリット・デメリットどちらも次の商品開発へ生かすようにしています。なんでもお話を聞いて、対面でのコミュニケーションを大切にする場所であり続けたいです。
山田さん: わたしはネット販売に挑戦したい気持ちもあるんですが、対面販売でない分直接伝えられないことのむずかしさをどうカバーしていくか。それをこれから思案していきたいですね。
ー 規模を大きくしたり店舗を増やすことは考えていらっしゃいますか?
手槌さん: 拡大するっていうのは今のところはないですね。ただこれまでやってないことに挑戦したいという想いはあって。たとえばいろんなトライアルができる場を提供するっていうのも挑戦したいです。地方の物産をあつめてうちで展示販売して地域と東京のお客さんをつないだり「モノ」だけじゃなくて「コト」の流れをつくる取り組みに挑戦してみたいです。
ー ALLを拠点にどんなプロダクトやつながりが生まれるか。プロペラデザインさんの活躍、今後も楽しみにしています!今日はありがとうございました。
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